北京·胡同窯変

北京、胡同散歩が楽しい。足の向くまま気の向くままに北京の胡同を歩いています。旧「北京·胡同窯変」もご覧いただけたらうれしいです。https://blog.goo.ne.jp/hutongyaobian

第299回 ぶらり北京―南池子大街・南池子美術館(普渡寺西巷)・東華門大街など(後)


南池子美術館を楽しんだ後、周辺をぶらぶらしてみました。



この辺りには二層の建物の多いことに気付きます。



歩いていると、ワンちゃんとその飼い主さんたちに遭遇。



幸いにも、お宅の中庭を拝見することが出来ました。



帰宅後調べてみると、この辺りは2001年頃に再開発され、その時に上の写真に見るような二層の建物が造られたようです。



ワンちゃん、飼い主さん、ありがとうございました。


お礼を言って、さらに歩いていると、なんと、あるお宅の玄関脇に、こんなものを見つけました。



これは、馬を繋ぎとめておく道具。中国語で「拴馬桩(シュアンマーヂュアン)」。
中国語に「貴重なもの」を表す「珍貴(ヂェングイ)」という言葉がありますが、この「拴馬桩(シュアンマーヂュアン)」はまさしく「珍貴」なものなのではないでしょうか。



南池子美術館のある普渡寺西巷をあとにして、再び南池子大街をぶらぶらと北上。



上の写真右に見えるのは「四季民福」という北京ダックのお店。「十一号烤鴨店」の「十一号」は南池子大街11号を示しています。


このお店を横目で見て、さらに前進。


その後、食事処や土産物店、そして貸衣装屋さんなどが軒を並べる東華門大街へ。




古い洋風の建物がありました。(以下の写真四枚は東から西方向を撮っています。)



この古い建物の隣りには「全福徳」という北京ダック店。



東華門大街の飲食店に関連したある事件の話を一つ。


事件の主役は、中華民国の初代大総統、その後皇帝にまでなろうとした袁世凱(えんせいがい)。


事件の内容は、1912年1月16日、袁世凱が宮中から退出すると、東華門大街の便宜坊酒楼にひそんでいた三人の革命党員が袁に爆弾を投げつけるというはなはだ物騒なもの。


爆弾は袁世凱にはあたらず、袁の護衛長を爆死させ、護衛兵数人を負傷させたとのこと。


この事件のあと、袁世凱は「久しく心臓の動悸、発熱、左の足腰の痛みなどの症状」があることを理由に、参内を拒んだそうです。愛新覚羅溥儀著『わが半生 上』「第二章 私の幼年時代」(1989年7月20日初版第32刷発行、筑摩叢書245)の中で編者によって紹介されているものを参照。


今、昔の衣装を身につけるのが流行っているのでしょうか、次の写真に見られるような貸衣装屋さんが目につくようになりました。



さらに東方向に歩いていると、お店の前に人だかり。


家族そろって北京旅行の皆さん。



ちょいとした手ごろな土産物をゲットするには、こんな感じのお店がよいのですよ。


みやげ物店でよく見かけるレトロな布製のショルダーバッグ。


子供用の漢服なんかも置いてありました。

こういうみやげ物店には必ずといってよいほど置いてある麦藁帽子や野球帽などもありました。


お店の前の木陰に眼を移すと、夏の海辺を思い起こさせる、楽(ラク)そうな椅子。


その横には「スイカ(西瓜)」。

スイカを食べていたらお客さんがやって来た。そこでスイカの残りを急いでやっつけ、スプーンを放り出して接客にいそしむご店主。そんなご店主の姿が眼に見えるようです。


「スイカ、いいなぁ」
そんなことを考えていると、スイカの代わりに宮廷から抜け出してきたような三人の美女がわたしの眼の前に姿を現してくれました。


清朝時代の衣装を身につけた素敵な三女性。


Vサインまでしてくれました。

宮廷の三美人、ありがとうごいました。


三美人にわかれたあと、のどが渇いたので下の写真のホテルにはいり、冷えたジュースをゴクリ。

HOTEL KAPOK・木棉花酒店


注文したのは「満杯 檸檬百香果」というレモンを使ったジュース。
場所柄、もっと高いかなと思ったのですが、意外と廉く、値段は、25元。

こちらのホテルの中にも貸衣装屋さんがあり、写真も撮ってくれるそうです。


のどを潤したあと、再び歩き出すと、昔走っていた路面電車を模した路線バスに遭遇。



そして東華門大街から今回の終点、東安門大街へ移動。



バスから降りる生徒たち。


生徒たちが向うのは、こちら。
中国児童劇場
課外授業で観劇でしょうか。



中国児童劇場の前身は今から100年ほど前の1921年(民国10年)設立の真光劇場。1951年、北京劇場と改称、1961年、中国児童劇場に。この劇場は設立以来ほぼ100年の間、京劇や映画、現代劇などで多くの人々を楽しませてきました。


下の地図は『1950 北京市街道詳図』(亜光輿地学社出版、大中国図書局発行、複製)という地図ですが、この地図では「真光影院」つまり「真光映画館」となっています。


中国児童劇場の写真を撮ったあと、今回は路線バスで王府井大街に行き、地下鉄に乗り換え帰宅しました。


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続けて、民国期、日本占領下の南池子大街・東華門大街・東安門大街にあった日本関係の企業を現在分かる範囲で以下に書き出してみました。


【南池子大街】
以下に書き出した企業は資料にその所在地が「南池子大街」と明記されているものに限っています。「南池子〇〇号」「南池子〇〇胡同」などと「南池子」に続けて「大街」という言葉が使われていないものはここでは省略しています。また、番号は当時のものなのでご注意ください。


秋元洋行・・・南池子大街8号
輸出入業、ラヂオ用品、レコード、蓄音機、諸楽器など


メルシャース工業合名会社(北京出張所)・・・南池子大街25号
製紙、製粉、製綿、製油機械設備、デイゼル機関、蒸気機関、工場用機器工具、電動機、発電機、電気絶縁陶器。鉱山用機器、鉄道港湾用品及機器。


株式会社大林組(北京支店)・・・南池子大街29号
土木建築請負業、右附帯業務一切


北支土木建築業協会(大林組北京支店内)・・・南池子大街29号


日米商事株式会社北京出張所(華名・日米洋行)・・・南池子大街32号
金物、機械工具、電気器具、護謨製品、工業薬品、其他雑品輸出入。


大平公司・・・南池子大街44号
陸軍・官庁・会社御用達
糧秣、糧食、軍需品、パン製造。
土木・建築・電気工事請負。
人夫・馬車供給。


勝山商会・・・南池子大街52号
鉱山土木用機械、カーバイド、農工具、土木材料。


日本司法省公館・・・南池子大街55号


株式会社丸永商店(北京出張所)・・・南池子大街69号
棉花、綿糸、綿織物、毛糸及手編毛糸、毛織物、光棉、人繊糸、人繊織物、絹糸、生糸、絹撚糸、絹織物、更生糸、更生糸織物、紙糸、紙織物、麻糸、麻物及其ノ他繊維工業製品、機械器具類及同部品類。建築材料、窯業製品、化学工業製品、食料品、電気器具、化粧品、売薬部外品、皮革製品、硝子製品、其ノ他荒物雑貨等。


三輪商事・・・南池子大街69号
諸幕、国旗類、社旗団旗、手拭類、各種印物加工。


森永製菓株式会社(北京配給所)・・・南池子大街75号
菓子、缶詰、乳製品。


千代田生命北支支部北京出張所・・・南池子大街77号


日本電池株式会社北京販売所・・・南池子大街78号
各種G・S蓄電池、各種蓄電池式安全燈、電気集魚灯、蓄電器機関車、電気機関車、超短波無線電信機。


参考資料
『中華民国・満洲国商工録 昭和15年度』(亜細亜年鑑発行所、昭和15年12月2日発行)
『昭和17年版 中国工商名鑑』(日本商業通信社、昭和17年9月28日第1版発行)
『北支向機械取扱業者調査書』(北支那開発株式会社、昭和18年12月25日発行)
『昭和14年度版 帝国実業商工録』(帝国実業興信所、昭和14年11月30日発行)
『全支商工取引総覧』(中国通信社、昭和16年1月1日発行)
『帝国商工興信録』(帝国商工興信社、昭和15年10月15日発行)
など。


【東華門大街】
※印の企業は、資料にその所在地が「東安門大街」とも記載されていたもので、ここでは資料の記載どおりに書き出してみました。


正大洋行(北京営業所)・・・東華門大街18号
発変電所機器、化学機器、産業機械、鉱山機械等一式。


亜洲公司(合名会社)・・・東華門大街20号
諸機械、農工具、建築材料、土木材料、鉱山用品、鉄道用品、車輪軌条及付属品、丸釘、鉄線、鉄鋼材、諸雑貨。


日華ホテル(別館)・・・東華門大街42号
陸軍・国際観光局御指定


華北無尽株式会社・・・東華門大街77号
貯蓄と金融


茂隆洋行出張所・・・東華門大街92号
機械、工具、地金、鉄道、鉱山用品、電気用品、護謨用品、各種パッキング。


の企業は、資料にその所在地が「東安門大街」とも記載されていたもので、ここでは資料の記載どおりに書き出してみました。


参考資料
『北支向機械取扱業者調査書』(北支那開発株式会社、昭和18年12月25日発行)
『帝国実業商工録 紀元2600年記念版』(帝国実業興信所、昭和16年9月25日発行)
『帝国商工興信録』(帝国商工興信社、昭和16年10月28日発行)
など。


【東安門大街】
守谷商会出張所・・・東安門大街14号
電動機、発電機、変圧器、配電盤、土木鉱山用機械、工作機械、起重機、輸送機、ベルト機、ワイヤロープ。


満蒙毛織株式会社(北支部)・・・東安門大街16号


株式会社印刷工廠(出張所)・・・東安門大街21号


平和洋行支店・・・東安門大街22号
絵葉書、ブロマイド


伊藤洋行・・・東安門大街24号
食料雑貨


大阪合同株式会社(北京駐在所)・・・東安門大街29号
染料、工業薬品、油脂製品、雑貨


東和洋行・・・東安門大街31号
硝子製品、陶磁器、毛織物、台所用品


井上福洋行・・・東安門大街41号
毛織物


日華ホテル(別館)※・・・東安門大街42号


共益洋行・・・東安門大街44号
貸切乗用自動車、賃貸貨物自動車


晋信洋行(北京出張所)・・・東安門大街44号(共益ビル2階)
建築材料、機械金物、耐火煉瓦


三機工業株式会社支店・・・東安門大街44号
暖房冷房、衛生、水道、電気工事請負、諸機械諸材料販売


北支白木公司・・・東安門大街44号
家具装飾、雑貨


株式会社折込広告社・・・東安門大街44号(白木公司内)


北京猪原洋行・・・東安門大街58号
家具類、木工品、各種毛皮、皮革、被服、天幕、雨覆、馬具類、白米、食料品、雑貨


東安ホテル・・・東安門大街77号


華北無尽会社※・・・東安門大街77号
無尽金融


雙葉館・・・東安門大街78号
旅館


日東商事株式会社(北支営業所)・・・東安門大街78号
工作機械、工匠具、測定器、バルグコック、電工具、圧力計器、空気圧縮機、鉱山機械、アスベスト製品、ゴム製品


参考資料
『昭和17年版 中国工商名鑑』(日本商業通信社、昭和17年9月28日発行)
『日本工業要鑑』(工業之日本社、昭和16年2月20日第27版発行)
『北支蒙彊商工名鑑 昭和14年版』(日本商業通信社、昭和14年5月15日発行)
『北支・蒙彊年鑑 昭和16年版』(北支那経済通信社、昭和15年11月8日発行)
『中華民国・満洲国商工録 昭和15年版』(亜細亜年鑑発行所、昭和15年12月2日発行)
『紀元2600年記念版 帝国実業商工録』(帝国実業興信所、昭和16年9月25日発行)
『北支向機械取扱業者調査書』(北支那開発株式会社、昭和18年12月25日発行)
『産業生産配給総覧 昭和18年度』(産業経済新聞社、昭和18年10月10日発行)
『日本都市年鑑(昭和17年用)』(東京市政調査会、昭和17年3月30日発行)
『帝国商工興信録 皇紀2600年昭和15年版』(帝国商工興信社、昭和15年10月15日発行)
など。

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