北京·胡同窯変

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第234回 北京・紅燈幻影《東壁营胡同》増補版


今回は東壁营胡同(DongbiyingHutong/ドンビーインフートン)におじゃましました。



当日は、陕西巷(Shanxixiang/シャンシーシアン)沿いにある東口から。


西端の胭脂胡同(YanzhiHutong/イエンヂフートン)まで続く東壁营胡同。


一歩この胡同に足を踏み入れると、決して広いとはいえない道路の道端に置かれた自転車や電動バイクの数の多さのためか、ある意味、ここで暮らしている人たちの体温のようなものがじかにこちらに伝わってくる、そんな印象を受けました。



外売(ワイマイ、出前)のお兄さんも忙しそうです。




2号院。


玄関先からチラッと見えた内部。
ひょっとするとひょっとするかも。
そんな思いが心の中に芽生える一瞬です。



まずは、角度を変えて、外観を。



年代物の華風洋館です。




建て増しされたために、もとの中庭がかなり狭くなっていることがわかります。



前回紹介させていただいた二層の建物と似ています。


玄関を入ってまっすぐ進み、突き当りを右折。
すると石段。




その石段はさらに続いていて、なんと、渡り廊下。




2号院を出て、3号院の玄関を眺めていると、



西方向から小鳥をこよなく愛する養鳥家さんがやってきました。


鳥籠をさげて歩く姿がいいのです。


お願いして写真を撮らせていただきました。



鳥籠をさげての散歩は、小鳥にはもちろん、飼い主さんにも良い運動になるのです。



この胡同の歴史は長く、明の時代には「皮條胡同(PitiaoHutong/ピーティアオフートン)、
清の時代には「東皮條營(Dongpitiaoying/ドンピーチィアオイン)」、民国期に「東壁營(Dongbiying/ドンビーイン)」と改名。
そして、新中国成立後の1965年に現在の「東壁营胡同(DongbiyingHutong/ドンビーインフートン)になりました。


民国二十五年(1936年)に発行された『北平市内外城分区地図』(複製)より。



後述しますように、この胡同内には、かつて“三等妓院”があった、また、暗娼が多かったと言われていて、そんなことが頭の隅っこにあるためか、もう真昼に見る夢の中をさ迷い歩いているようです。



出窓(張り出し窓)のある建物がありました。




この出窓のお宅は8号院。
この胡同関連の記事の中には、ここは昔、二等妓院(茶室)だったというものもあるのですが、それ以上のことは現在不明。



8号院の前は7号院。


こちらはホテル。


名称は、華駅易居


【日本旅館】
宿泊施設といえば、日本占領下のこの胡同内には、日本旅館がありました。ただし,番地が現在のものと一致するものかどうかは未確認。


名称は三七十屋旅館,
住所は東壁営7号。


妓院について・・・
妓院(妓楼)には、三つ、ないし四つの等級があり、等級と呼称を記すと次の通り。


一等(頭等)ーー清吟小班
二等-----茶室
三等ーーーーー下処
四等ーーーーー小下処


ところで、清末から民国期にかけて、“三等妓院”の多い場所をしめす代名詞として“王皮蔡留”という言い回しがあったそうです。


「王」とは「王皮胡同」、「蔡」とは「蔡家胡同」、「留」とは「留守衛(現在の青風巷と青風夹道を併せた地域か)」を、そして「皮」とは今回の「皮條營(現在の東・西壁营胡同)」を指しているとか。


また、記事の中には、かつてここには暗娼(私娼)が多くいた、というものもあり、だいたいの人数でよいからそこんとこを具体的に知りたいとのやむにやまれぬ思いにかられて調べてみたのですが、残念ながら今のところ不明。


ちなみに、この胡同にいたと言われる暗娼とは直接関係ないのですが、北京の暗娼関連のことを書いておきますと民国6年(1917年)の北京には7000人をくだることのない私娼がいたそうです。


ご参考に、民国6年当時の北京における公許の妓院数並びに妓女数を挙げておきますと、妓院数391、妓女数3500。この数字を見ますと、当時、もぐりの妓女すなわち暗娼が公許の妓女の倍いたことがわかります。


以上、『北京地名典(修訂版)』(王彬、徐秀珊主編、中国文聯出版社)、『民国时期社会调查丛编(底辺社会巻下)』所収麦倩曾『北京娼妓調査』などを参照。



写真奥を南北に走るのは胭脂胡同。それを越えていくと西壁營胡同(XibiyingHutong/シービーインフートン)」です。

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