第283回 北京・紅燈幻影 《朱茅胡同》その3 ―吉祥結、胡同のアニマルズなど―
おそらく住民の皆さんに可愛がられているのでしょう。初対面のわたしに何の警戒心ももたずに近づいてきて、苦労したけどやっとのことで写真を撮らせてくれたニャンコ。
写真を撮り終わり、
「また遊びに来るね」
と挨拶しながら、立ち上がってズボンの尻についた土ぼこりを払っていると、
たまたまでしょう、ニャンコも腰を上げてこちらの足元に近づき、その顔とは裏腹に優しく「ニャァ」とひと声。
「またおいで、遊んであげるから」とでも言っているのでしょうか・・・。
わたしはこのニャンコに厚徳仁壽クンという名前をつけた。
「楽しいニャンコに出会えてよかったなぁ、これは他の人には秘密にしておこう」
ひとりニヤニヤしながら、次の場所に移動しました。
楽しい思いにひたりながら移動したのは、こちらのお宅。
うぅぅぅ・・・番号がわからない。
でも、地面に埋まった門墩とその模様を眺めていて、思い出したことがありました。
こちらは前々回紹介させていただいた妓楼の一軒、艶福茶室旧跡です。
詳しくは『第281回 北京・紅燈幻影 《朱茅胡同》その1』をご覧ください。
楽しいことが重なって、さらに南へ。
道端に花壇がありました。
朱茅胡同にふさわしい可憐な花たちが目を楽しませてくれました。
再び、大吉大利(すべてうまくいく)。
年季の入った貫禄たっぷりの門環(メンファン)・門鈸(メンボー)
門枕木を撮り終わって、見あげると青空が気持ちいい。
日差しを浴びた屋根の上のススキが、初秋のそよ風にやさしく揺れていました。
瓦に模様がありましたよ。
見えるかな・・・?
吉祥の二文字の間に置かれた模様。
これは「八宝吉祥図」の一つで「吉祥結」(吉祥紐とも)と呼ばれるもの。
上の画像は岩本公夫・ウェブ版『中国の門墩』よりお借りしています。
https://mendun.jimdofree.com/
ラマ教(チベット仏教)では「宝傘・勝利幢・宝瓶・金魚(又は二匹の魚)・蓮花・左巻法螺貝・吉祥結・法輪の八つはそれぞれ釈迦仏の八つの器官を表す図」とされ、清の時代はラマ教が盛んだったため、門墩などにもこの八つの吉祥図が飾られたそうです。
ここでは、便宜上日本のフリー百科事典『ウィキぺディア』「八吉祥」から「吉祥紐」の解説を次にあげてみました。
深遠な仏教の教義・思想が説明されていますが、その思想を庶民にもわかりやすく目に見える形で示したのが「吉祥結」「吉祥紐」だったのではないかと思われます。
《 吉祥紐
エンドレス・ノット
吉祥紐(またはエンドレス・ノット、盤長、梵:śrīvatsa; チベット文字:དཔལ་བེའུ་; ワイリー方式:dpal be'u; THL: pelbeu)[3]は「組紐で愛を象徴的に表現した吉祥紋様[4]」である。これは、万物の究極的なつながりのシンボルである[5]。さらに、このシンボルは智慧と慈悲の相互作用、聖と俗の相互依存、智慧と手段の統合、空と縁起の不可分性、悟りにおける般若と悲の結合(ナムカ(英語版)参照)などを象徴している。この結び目、網はまた、仏法そのものの比喩でもある(因陀羅網など)。ヒンドゥー教においてはヴィシュヌの象徴とされ、彼の胸にはこの紋様(シュリーヴァッサ(英語版))が浮かんでいるという。仏教においても、三十二相八十種好によれば釈迦の胸には同様のものがあるとされる。》
吉祥結(吉祥紐)は、中国結(中国結び)とも呼ばれ、北京(広く中国)でよく見かける飾り、吉祥文様の一つ。難しい話しはさておいて、幸福や健康や平安などおめでたい意味が込められています。
自宅近所の道路沿いにならぶ「中国結び」を模した飾り。
日が暮れると自動的に点灯し、道行く人たちの目を楽しませてくれる、ちょっとした「街の灯」といったところでしょうか。
初秋のそよ風に揺れるススキの穂のようにゆらゆらっとさらに南へ・・・
飼い犬とお散歩中の女性に遭遇しました。
かなりの高齢犬で、自分の力では思うように散歩できないので、このように毎日一緒に散歩しておられるそうです。かけがえのない命を大切に大切に抱えながら歩く姿、わたしの心に刺さるものがありました。
人と人との出会いはもちろんのこと、人と動物との出会いも大切にしたいなぁ、と思うのはわたしだけでしょうか。
振り返れば、この朱茅胡同を歩いただけでも、次のような動物たちに出遭いました。
「朱茅胡同」を舞台とした「アニマルズ」ショウをご覧ください。
謎のイヌ・・・北出入り口のところに何気なく鎮座していました。
ニワトリ(鶏)
ネコ(猫)とサカナ(魚)
チョウ(蝶)
カササギ(鵲)
ツル(丹頂鶴)
シカ(鹿)
再び、ネコ(猫)・・・ニックネームは厚徳仁壽(こうとくじんじゅ)クン
再び、ニワトリ(鶏)
飼い主さんと散歩中のワンちゃん
登場してくれた動物たち、彼らはあたかもこの胡同を守護する神々のように息づいています。
次回につづきます。